

午前8時30分、スタート地点に近い西新宿駅に着いた僕は、新宿中央公園に隣接する熊野神社へと向かった。ドキドキした。だってこの寒空の下、いままさにあのコは、スタートのときを迎えようとしている…ああ、熱いものが込み上げてくる。下半身にソワソワ感がこみ上げる。でも、あのコの緊張はきっとこんなもんじゃない。
十二社通りを熊野神社方面に歩いていると「めし処 勝っちゃん」という名の店を見つけた。「勝」の一文字を見て一気にテンション急上昇。きっとあのコも“勝つ”。出だしの縁起はグーだ。
熊野神社に入り、鳥居をくぐると正面に立派な拝殿が現れた。この熊野神社には伊耶那美大神(いざなみのおおみかみ)という神様がまつられており、縁結びや家内安全の御神徳があるという。完走祈願とは関係ないようだけど恋愛成就にはうってつけ。ひとまず全部引っくるめて祈願! ホント頼んます!!



完走祈願を無事終わらせ、次はゴールしたあのコを喜ばせるプレゼントを探しの旅に。ところがまだ朝9時を回ったところなので、コンビニくらいしか開いてない…。うわああぁぁぁぁぁぁぁっ!! 予感はしてたけど、この時間帯の買い物はさすがに困難か?! テンパり気味に十二社通りを新宿パークタワー方面へ南下すると奇妙な亀のビジュアルが目に飛び込んできた。
「勝」の一文字を背負った巨大なその亀は、まっ黄色なビルの壁をよじ登っていた。突っ込みどころ満載のアートをいぶかしく思いつつも、やはり「勝」の一文字が気になる。縁起モノに目がないモードになっているので、文字通り吸い寄せられるようにビルに近づく。ビルの1階で朝早くから営業を開始していたのは、労働安全用品を販売している「萬年屋」というお店。「亀は万年」…なるほど! 巨大な亀のアートはこの店のシンボルマークらしい。店先にはド○キ○ーテを彷彿させる山積みの商品。この店ならあのコが喜んでくれそうなグッズをゲットできるかも!
期待を胸に入店すると、店内には作業服、ヘルメット、長靴など、ガテン系のアイテムばかり…。あうぅぅ、ここじゃ難しいかも…と諦めそうになったそのとき、レジの壁にマラソンランナーの写真を発見! よく見ると、2009年の名古屋国際女子マラソンで優勝した藤永佳子選手のサインや名将・小出監督の写真などが飾ってあるではないか!! いったいどういう関係が…?! 実はこの店、縁起よさげなカチカメ(※店のシンボルマークの亀の名前)にあやかってマラソン関係者から愛されている店なのだそう。マラソンランナーたちの勝ちへの執念が、労働安全用品の店内にまで及んでいるという事実に驚愕! すげぇ! 萬年屋すげえよ!!
萬年屋がマラソンの聖地であることを理解した僕は、すべてのアスリートに喜ばれるであろうタオルを購入。これは東京マラソン先着100名に配られる代物なのだとか。期せずして、東京マラソン気分が盛り上がってまいりましたぁ!
東京マラソンはどうやら無事スタートしたらしい。ランナーを応援しにきた観客でにぎわう都庁前の沿道。僕は次の祈願スポット、飯田橋に向かうため駅へと歩き出した。と、新宿ワシントンホテル本館前にさしかかったところで、敷地内に小さなお堂を発見。なんだか気になる…。近づいて見ると、なんとそこには韋駄天尊がまつってあるではないか! 韋駄天とはよく走るという俗伝がある仏法守護神のひとり!! うおおお! 完走祈願にふさわしい場所がこんなところにもあったなんて!! 新宿がこんなにマラソンシティーだったなんて知らなかったよ。
新宿中央公園を歩く足取りは軽く、ナイアガラの滝から流れ落ちる水にさらに心が洗われる。完走祈願と恋愛成就に力強い手応えを感じながら僕は新宿を後にした。




















